実生について


photo/Kazuyoshi Furuichi
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例えば、ラフランスは林檎に接いで育てられるそうです。かぼちゃに接いだ苦くないキュウリがあります。これは品種改良により苦味をとったものです。しかし苦味には果実を害虫から守る防御作用という側面があるといわれています。ワインの場合には、ぶどうの品種にぶどうを接いで育てられます。日本ではカラタチ台に接ぐ接木が柑橘の中で世界的に見ても珍しいほど盛んになっています。ゆずも、もとは台木として使われていたのですが、ポンカンや温州みかんの産地でもカラタチ台木に移行しており、実生のゆずの存在は、はますます貴重になっています。
いつでも誰でも「ゆず」が食べられるという立場に立てば、生産効率が良く安定供給ができ、また農家として採算が立ち易いという意味において実に大切なのが接木のゆずです。しかし、美味しいゆずが食べたい。ゆず本来の香りや独特の苦味や酸味がほしい。という消費者の立場に立てば、手間がかかり確率も悪いけれど、樹齢を重ねた実生ゆずもまた大変素晴らしいのです。いわば、天然の鯛と養殖の鯛、1000年の松と100年の松というふうに比較すると判り安いのではないでしょうか。
しかし、「ゆず」よりももっと収益が上がり栽培効率のよいものがあれば、多くの農家ではゆず栽培を止めてしまうかもしれません。生産効率の悪い実生のゆずばかりを増やすことはできないのです。ですからワインのように栽培方法や栽培地や製造・生産方法を楽しむような文化が育ち多くの「ゆず」が楽しまれることを切に願っています。
もし本当に樹齢を重ねた枯木のゆずの価値が認知された時は、もう値段がつけられないかも知れません。因みに、1000年の松と聞くと凄いと思われるかもしれませんが、世界中に存在する松や彬は、木の表面が弾けて(鱗のように割れ目があって)コケがつきにくく長生きします。
一方柑橘類は元来幹が細く木肌がつるっとしていてコケがつきやすく短命なのです。世界中に存在する1000年の松よりも、また最高の白トリュフよりも、ある年の貴重なワインの製造本数よりも、実生で樹齢200年を越えるおいしい枯木のゆずの方が少ないのですよ、と申し上げたらきっとびっくりされるのではないでしょうか。その貴重さをお分かりになって頂けるのではないでしょうか。縄文彬級のものが世界に何本あるのか判かりませんが、もし世界中で3000本ぐらいならば、枯木のゆずもそのぐらいの希少さなのです。一首のアミニズムを感じさせる、これが実生で樹齢を重ねた"枯木ゆず"の値打ちなのです。



実生のゆずとは


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種子をまいて木々の適性を配慮しながら徹底管理のもと大きくなるまでそだてます。一般には15〜20年前後で結果します。よく「桃栗三年柿八年ゆずのお馬鹿ちゃん18年」ともいわれ、そのぐらい経たないと実をつけないのです。樹齢を経て樹齢100年以上になると枯木(こぼく)ゆずと呼ばれます。推定寿命は300年とも言われています。樹木の高さは平均18mから高いものだと20m以上になります。そのため、高い場所では、枝が尖っていてゆず肌を傷つけるため、こまめに剪定し、木々に合わせてあげることが大切なのです。当然管理は面倒ですが、長い年月に耐えた実生ゆずは、光を求め自分に適した形に時間をかけて樹形を整え成長していくため、皮も厚く害虫にも強くゆず肌は凹凸があり、香りは強く実生本来の味がします。収穫も命がけで、美味しいゆずほど危険なところにあり、この上もなく生産効率が悪いゆずです。